妊婦さんとお口の健康のお話
こんばんは、副院長です。
今年は冷夏という噂を聞いていたのですが、しっかりじっとり暑くなってくれました。今年の夏は新型コロナウィルスの影響もあり、マスクを着用している方も多いかとは思いますが、くれぐれも熱中症には気をつけてください。
さて、世の中のお母様方は母子手帳に妊娠中と産後の歯の状態を記すためのページがあることをご存知かと思います。欄外には小さく歯周病と早産との関連を示す一文が見られるかもしれません。
今回はその歯周病と早産・低体重児出産の関連についてのお話をしようかと思います。
早産・低体重児出産の定義
早産は妊娠37週未満での出産を、低体重児出産は新生児の体重が2,500g未満での出産のことを言います。よく勘違いされがちですが、低体重児=未熟児ではありません。
歯周病との関連
妊娠の末期になるとプロスタグランジン(PG)、TNF ーα、ILー1βのような炎症によって増加する炎症性物質、オキシトシンなどのホルモン、タンパク分解酵素の生産が上昇することで子宮収縮が促されるなどして分娩・出産となります。
一方で歯周病はというと、口腔内という限定された空間で起こる炎症性の疾患です。この局所での炎症反応が血液中の炎症性物質を増加させます。TNFーα、ILー1、ILー6、PGなどがそれです。
どうでしょうか。分娩・出産に関係する物質と歯周病によって増加する物質というのはかなり一致していることが分かります。
つまり、歯周病によって血液中に上記の物質が増えることで、出産に影響を及ぼす可能性があるわけです。
実際、数々の症例対照研究やコホート研究で、歯周病と早産・低体重児出産には関係があるとされており、歯周病学会においても、歯周病が早産・低体重児出産のリスクを増加させる可能性を述べています。
歯周治療は早産・低体重児出産のリスクを減らせるか
じゃあ妊婦さんは積極的に歯周病治療すれば、早産・低体重児出産予防できるんですね!とは、残念ながらいかないようです。
もちろん、歯茎の健康回復を目的に歯周治療を行う場合には、当然ながら有効です。しかし、数ある論文を見てみると、妊娠中に歯周治療を行っても、早産・低体重児出産のリスクは減らないよ、と結論づけているものの方が多いのです。そのため、妊娠が発覚してから、早産・低体重児出産の予防のために歯周治療を受けるというのは推奨しない、というように歯周病学会でも述べられています。
副院長の個人的な考え
わたしが考えるに、妊娠前に歯周治療を終了させておくのが効果的な予防方法なのではないかと思います。そんなん言われなくても分かってるし、それが出来たら苦労せんワイと突っ込まれそうな気がしますが。
一応このように考える根拠としては、羊水中や臍帯から歯周病原菌が検出されたと報告している論文があることや、早産のあった妊婦さんは羊水中の炎症性物質(ILー6やPG)の濃度が高かったと報告しているものもあります。
つまり、すでに細菌が胎盤や臍帯、羊水中に定着してしまっている可能性を考えた場合、定着後にどれだけお口の環境を整えてもあまり効果がないのかもしれないと考えたからです。あくまでも個人的なわたしの考えです。
最終的に、やはり常日頃からお口の環境を整えておくのがベストだなあ、というところに落ち着いてしまうのでした。結論がこんな感じになってしまって申し訳ないです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
塩竈市の歯周病治療は皆川歯科医院まで!